ねぇねぇ最近コロナのニュースでうつ伏せが良いって聞いたんだけど何が良いの?
重症のCOVID-19に対してうつ伏せにするだけで肺の状態が大きく改善することがあるんだ。
今日は3つのメリットについて一緒に勉強していこう!
新型コロナウィルス感染症と腹臥位の関係
最近テレビでは新型コロナウィルス感染症の話で持ちきりです。
そんな中「患者をうつ伏せにすることが有効です」という報道も見かけます。
なんでコロナに腹臥位にすると良いんだろう・・
こんなことを思った方はいるのではないでしょうか?
ということで1つずつ解説していきます。
腹臥位療法の3つのメリット
腹臥位療法には3つのメリットがあります。
- 背側の無気肺(下側肺障害)の改善
- V/Qミスマッチの改善
- VILI/VALIの予防
って言われても言葉が難しくて分からんから説明して!
下側肺障害とは?
無気肺という言葉を聞いたことはありますか?
無気肺とは簡単にいうと肺に空気が入っていないということです。
よく分かりましぇん。。。
肺というのは肺胞という1つの小さな袋がブドウの房のように無数にくっついてできているんだ。
通常肺胞の中は空気で満たされています。
なのでX線画像を見ると黒く映ります。
無気肺は様々な要因によって肺胞の中の空気がなくなった状態を意味します。
気管支の閉塞による無気肺
これは閉塞性の無気肺とも呼ばれます。
気道分泌物(痰)などによって気管支が閉塞することで
その先の肺胞に空気が到達しない(肺胞が萎んでしまう=虚脱)状態を示します。
言い方を変えると肺(肺胞)が潰れた状態とも言えます。
肺胞は空気を失い潰れた状態となっているのでX線画像では潰れた範囲が白く映ります。
人工呼吸器の患者さんでX線写真で肺の一部が白くなっているのを見かけることがあるね。
その時は気管支鏡で分泌物を吸引して閉塞を解除したり
体位ドレナージを行うことによって改善することがあります。
この他にも胸水によって圧迫されることや高濃度酸素を投与することにより起こる吸収性無気肺など無気肺の原因は様々あります。
COVID-19と下側肺障害
下側肺障害というのは仰臥位の状態でいう下側、つまり背中側の肺が虚脱してしまうことなんだ。背中側は主に下葉が広がっているから日頃から背側の聴診は重要なんだね。
重症のCOVID-19では人工呼吸器管理を要する状態になります。
特にCOVID-19では治療が確立しておらず改善するか否かは最終的に患者さん自身の免疫に依存します。
つまり患者さんの免疫がウィルスに打ち勝つまでの期間を医療でサポートするという”支持療法”が主体です。
そうなると人工呼吸器の期間が長くなるのね・・。
人工呼吸器では生理的な呼吸である陰圧呼吸ではなく陽圧呼吸になります。
そうすると背中側の肺が無気肺になりやすいと言われています。
その理由は大きく2つ
- 重力による影響
- 横隔膜の動きの変化
重力による影響は単純で
仰臥位になっていると重力によって分泌物が背側に貯留する
あるいは重力による臓器の重みで背側の肺(下葉)が潰れる
こうした理由です。
横隔膜による影響
陰圧呼吸(自然呼吸)と陽圧呼吸(人工呼吸器)の大きな違いは横隔膜の動きにあります。
まず図を見て下さい。
【図の説明】
- 青い線:呼気時の横隔膜の位置
- 青い点線:吸気時の横隔膜の位置
- 黄色の丸:肺
- 赤い>:肺毛細血管
生理的な呼吸では横隔膜が大きく下がることで胸腔内の陰圧が発生します。
自然呼吸の場合はどちらかというと背中側の横隔膜が大きく動きます。
そうすると背側の肺(下葉)の換気量が大きくなります。
さらには仰臥位の場合は重力によって背中側の肺毛細血管の血流が増えます。
換気量が多い肺=血流が多い肺毛細血管
という具合に換気と血流のバランスがつり合った状態となりガス交換の効率が良くなります。
陽圧呼吸の場合は背中側の横隔膜が動きづらいから下葉が広がりづらいんだね。
自発呼吸がない状態では横隔膜が動くことはありません。
人工呼吸器から肺に向かってガスを送り込むと強制的に肺が膨らみます。
そうすると横隔膜は押されるような形で足側に動きます。
しかしながら臓器などの重さによって背側の横隔膜は動きづらい状況です。
こうして下側肺障害が生じます。
その結果
換気量が悪い肺=血流の多い肺毛細血管
というバランスとなります。
これが換気(V)血流(Q)比不均衡(ミスマッチ)と言うのね♪
下側肺障害とV/Qミスマッチの是正
腹臥位療法の大きな目的は簡単にいうと背側と腹側の肺をひっくり返すことです。
こうすると良い肺に血流が増えて虚脱した肺に血流が減った状態になってV/Qのバランスとしては釣り合っているね。
腹臥位にすることで虚脱していた下葉に集中していた血流は健常肺に再分布します。
こうすることでV/Qミスマッチは一時的ではありますが改善します。
一方で虚脱した肺を上にすることで重力や横隔膜の影響が取り除かれて
虚脱した背側の肺が拡張することが期待されます。
患者さんにもよりますが腹臥位翌日のX線写真がきれいになっているのを見たことがあります。
腹臥位療法中に1回換気量が増えていく(PCV下)こともあります。
VILI/VALI予防
先ほど説明しましたが
下側肺障害の状態では背側の肺が虚脱した状態となるので腹側の肺が健常肺となります。
その状態で人工呼吸器によってガスを送ると当然広がりやすい肺にガスが逃げていきます。
怖い先輩か優しい先輩の2択だったら質問する相手は即答ね。。(チーン)
そうすると健常肺が過剰に進展して肺に傷害が起きることがあります。
VILIにはいくつか種類があるんだけどこのような量による傷害はVolutraumaと呼ばれているよ!
近年ではこうした合併症を予防するために過剰な1回換気量を避けるなどの肺保護戦略を行っています。
腹臥位でもVILIの予防効果が期待されています。
エビデンスはあるの?
腹臥位療法は酸素化能の改善を目的として結構昔から実施していたみたいなんだ。
2013年にARDSの患者さんを対象に腹臥位と仰臥位(半座位)を比べた研究が発表されました。
466人のARDSの患者さんを対象にランダムに仰臥位と腹臥位を比較した結果
腹臥位を行った群で重症度を考慮(SOFAで調整)しても死亡率に優位に低いと言う結果になりました。
なので今では中等〜重度のARDSに対する標準治療になりました。
ちなみに各国のCOVID-19に対するガイドラインでも腹臥位療法が推奨されています。
まとめ
- 腹臥位療法は下側肺障害に対する治療
- 下側肺障害とV/Qミスマッチを是正するメリットがある
- VILIを予防する可能性がある
- 腹臥位療法はエビデンスのある立派な治療の1つ
完
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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