こんにちは!現役ICU・認定看護師のNパパです!
ICUに慣れていない頃って重症患者が入室した時にまず何を考えるべきか分からず、先輩に突っ込まれる・・・
こんな経験をした方は案外多いんじゃないでしょうか?
この記事では、ICUに配属されてまもない方がチェックリストのように重症患者の管理を理解するための方法を4つのポイントに絞って解説します。
この記事はこのような人にオススメ!
- ICU配属後1〜2年未満
- 業務には慣れているけど治療の意味などがよく分からない
- 患者のアセスメントをもう少し深掘りしたい
今回紹介する内容を理解するだけで
- 「全ての重症患者に共通する管理の視点」
- 「治療だけでなく看護ですべきこと」
これを考えられるようになります。
4つのポイントで考えよう
具体的な臨床場面を上げて考えていきましょう。
患者情報
【患者情報】
注:仮想です
■基礎情報
- N原 太郎(68・男性)
- 入院時疾患:市中肺炎
- 身長:172cm 体重:82kg
- 生活歴
ADL/IADL自立、妻と2人暮らし
息子が1人いるが遠方圏に在住
- 既往歴:2型糖尿病 高血圧
■入院後経過
発熱、呼吸困難を主訴に呼吸器内科病棟に入院した男性。
抗菌薬にて治療を開始していたが、夜間呼吸困難が増大し、呼吸回数の上昇、SpO2および意識レベルが低下し人工呼吸器管理目的にICUへ入室となった。
ICU入室後に気管挿管を行い人工呼吸器管理を開始した。
(血液ガス分析:2型呼吸不全と分類)
- 末梢静脈路:24G・20G
- 尿道カテーテル
この患者さんを元に一緒に考えていましょう。
事例出されたら燃えてきたわ!!
4つのポイントを抑える
まず、ICUに入室して考えるべきことはこちらです。
- 合併症予防
- 栄養(腸管使用の有無)
- リハビリテーション
- ICU退出目標
では1つづつ解説していきます!
合併症予防
ICUに入室する重症患者さんは様々な医療デバイスが留置され、ハイリスク薬の投薬や免疫異常などの極めて重篤かつストレスフルな状況にあります。
これによって様々な合併症の発生リスクが高い状態です。
ただでさえ重篤な状態に加えて合併症を生じると
原疾患が改善しているのにも関わらず命の危機に陥ることもあります。
なので合併症を予防していくことは看護において大事な要素です。
代表的な合併症を示しながら解説します。
医療デバイス関連感染症
デバイスっていうのは末梢ラインやAライン,尿道カテーテルなどの治療目的で体内に留置されているものね♪
医療デバイス感染症を予防する上で重要なことは毎日のアセスメントです。
何をアセスメントするのかというと
「必要なデバイスと不要なデバイス」
これを考えることです。
ICUでは漫然にこれらのデバイスが留置されることが多いです。
「ICUだから」「重症だから」
これはデバイス留置の理由にはなりません。
- 血行動態を評価する
- 正確にin/outを評価する
医療デバイスの留置は医療デバイス関連感染症のリスクがあります。
つまりデバイスに起因して感染症が起こることです。
- CAUTI:カテーテル関連尿路感染症
- CRBSI:カテーテル関連血流感染症
- VAP:人工呼吸器関連肺炎
例えば、CAUTI(カテーテル関連尿路感染症)は尿道カテーテルの長期留置に深く関連します。
- 留置期間が7〜10日で50%以上の患者が細菌尿が検出
- 留置期間が30日以上で100%の患者が細菌尿が検出
- 入院治療コストの増加
- 入院期間の延長
- 死亡率の増加
血管アクセスデバイスの複数留置も要注意です!
CVCが留置されている状態で何本も末梢ラインが留置されている(逆に輸液1本なのにCVCとか)のを見かけます。
これも血流感染のリスクになりますね・・。
冒頭で示したケースで考えてみましょう!
- 末梢静脈路:24G・20G
- 尿道カテーテル
みなさんだったらどう考えますか?
鎮静・鎮痛やカテコラミン等の薬剤を使用する可能性があるため、CVCを留置する可能性が高いです。
そうすると24Gの末梢はいらなそうですね。
20Gに関しては、ショック時の急速輸液や輸血用として使用する可能性があるので、残しておいてもよいと思います。
急速輸液に関してはCVCよりも太く短いルートの方が有利とされています。
これは「ハーゲン・ポアズイユの法則」という流体力学の考え方から言えます。
簡単に言うと円形のルートに流体(液体)を流す時は、太い経(これが一番影響する)で短いルートを選択すると、流体の流れる速度が早くなるという考え方です。
これはECMOの脱血管の径が大きいことにも関係します。
「尿道カテーテル」に関してはin-outバランスを計測する必要があるので尿道カテーテルは適正使用と言えます。
特に呼吸不全の患者さんのin-outバランスとしては、ショックがなければ比較的ドライに管理する必要があります。
あとは血液ガス評価のために「Aライン」は必須なので留置されるでしょう。
DVT(深部静脈血栓症予防)予防
次にDVT予防です。
施設による違いもあると思いますが、出血性疾患の病態がなければ未分画ヘパリンの投与が選択されると思います。
あるいはフットポンプが多いでしょうか。
- 血液凝固能の亢進(過凝固状態)
- 血流のうっ滞
- 血管内皮障害
DVTはこれらの要因によって生じます。
血流のうっ滞というのさ運動をしなくなるので下肢の筋ポンプが働かなくなることで生じます。
フットポンプはこれに対する対策ですね。
血管内皮細胞とは血管の内側を構成する細胞です。
カテーテル留置などの機械的な要因や炎症などによっても障害を受けます。
鼠径部にCVCや透析のためのカテーテルが留置されている場合は要注意ね♪
VAP(人工呼吸器関連肺炎)
VAPは「人工呼吸器装着後48時間以降に新たに発生した肺炎で、人工気道に関連した院内肺炎」です。
予防に関してはVAPバンドルが推奨されていますが、内容は国によって異なるのが現状です。
- 仰臥位で管理ない(30°以上が推奨)
- 手指衛生の徹底
- 回路交換を頻繁にしない
- 過鎮静を避ける
- 人工呼吸器からの離脱を毎日評価する
バンドルというのはこれを1セット「全て実施」するということです。
長期の人工呼吸器使用で生じる晩期VAPでは、MRSAなどの耐性菌が起因菌となることが多いので厄介な合併症になります。
手指衛生など看護師が注意することもあるね♪
リハビリ・栄養管理
これは患者さんが回復していくために必要な要素です。
リハビリに関してはプロトコル化されている施設もあると思います。
早期離床の早期とは
入室から48時間以内
と定義されています。
そしてリハビリと1セットで考えるべきは栄養です。
運動と栄養は関連づけて考えるべきです♪
特に栄養管理では腸管の使用が重要です。
呼吸不全は炎症や呼吸仕事量の増大に伴って安静時の消費カロリーは相当なものになっています。
代謝としては異化(分解)が亢進し、筋肉はどんどん分解されていきます。
これは飢餓状態と同じ状態です。
飢餓状態には2種類あると言われています。
- マラスムス
- クワシオルコル
マラスムスとは主にエネルギーの欠乏状態を示します。著名な体重減少が見られます。いわいる紛争地域などの極度に痩せた子供を連想します。
一方でクワシオルコルはタンパク質不足の状態です。
タンパク質の減少により膠質浸透圧が低下し浮腫を認めます。
術後や過大侵襲下の患者さんはこれに該当します。
どのくらいが適正カロリー?
というのは明確なコンセンサスがないのが現状です。
ただしOver Feeding(栄養過剰)は害ということはわかっています。
異化が亢進しているということは、逆に言えば内因性の栄養を供給(自分の身を削って自分自身に栄養を供給)しています。
そのため内因性の栄養供給を加味して少ない量から始めていくことが無難です。
(超急性期は腸管を使用するという程度で捉えて良いと思います)
事例の患者さんの栄養はどう考えれば良い?
注意すべきはこの患者さんは、主病態が2型呼吸不全だということです。
糖質は呼吸商が大きいため積極的投与は二酸化炭素の過剰産生を促します。
なので二酸化炭素産生量が少ない(=呼吸商が低い)脂質を多めに配分にする必要があります。
栄養素(脂質・糖質・タンパク質)が分解されてエネルギーに変換される過程における酸素消費量に対する二酸化炭素排出量のこと。
呼吸商=単位時間あたりの二酸化炭素排出量÷ 〃 酸素消費量
栄養素 | 呼吸商 |
糖質 | 1 |
脂質 | 0.7 |
タンパク質 | 0.8 |
ICUの退出目標
これは重要な視点で
- 医師がどのくらいの期間を目標に退出を考えているか
- どのような状態になればICUを退出できるか
これを共有することが大事です。
ゴールが決まってなければ計画的にケアができません。
例えば事例の患者さんでは
早期に人工呼吸器を離脱したいと考えたとします。
そのために看護師にできることは
- 廃用を防ぐために床上リハビリ(ROM ex)を実施
- 離床ができるタイミングを相談する
- 痛み/鎮静のコントロール
- 栄養と消化(排便)の管理
これらが揃えばせん妄対策にもなります。
この他にも家族のサポートだったり・・・。
語り尽くせない部分もありますが
基本的にはこのような部分をアセスメントすることが大事だと思います。
ICUに異動したての人には少し難しく感じる部分もあります。
しかし1年後にはきっと当たり前のように考えることできています。
今は業務がおぼつかなくてもいいんです。
異動したての時期にこうした情報に触れることが大事です。
まとめ
重症患者さんの管理のポイント4選!
- 合併症予防
- 栄養(腸管使用の有無)
- リハビリテーション
- ICU退出目標
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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