医療・看護

【論文解説】COVID-19における”非”気管挿管患者における腹臥位療法

さて今回は腹臥位療法シリーズのラストを飾る

非気管挿管患者(COVID-19)の腹臥位療法に関するお話しです。

腹臥位療法に関するお話(メリット・デメリット・手順など)は下記を参照して下さい♪

論文を読むことに慣れてるわけではないんですが・・

そして独学なので批判的な吟味まではできないかもしれせんが海外の文献をご紹介いたします。

認定になるまではこうした文献なんて読んだことがなかったのですが

皆様にも共有できたらと思います。

ということで本日も一緒に学習して行きましょう!

文献の紹介

今回取り上げる文献です。

新型コロナウィルス感染症の非気管挿管患者における腹臥位療法に関する論文です。

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私は英語が読める・話せるというわけではありませんがDeepLという翻訳サイトを頼みにいつも読んでいます。

論文の題名

非挿管の呼吸不全患者(COVID-19)における腹臥位療法の生理学的効果と実現可能性:前向きコホート研究(Lancet Respir Med.2020 Aug)

ポイント

前向きコホート研究というのはある仮説(PECO)をもとに現在から未来の時間軸で行う観察研究の1つです。ある暴露因子とアウトカムの因果関係を調査することができます。

この論文はLancetと呼ばれる有名な医学雑誌に掲載された論文です。

研究を順番に読んでいこう

 【研究背景】

  • COVID-19では酸素療法や非侵襲的人工呼吸器(NIV)のサポートが多くの場合必要になる
  • しかしそれでも状態が悪くなり気管挿管を必要とすることが多い
  • COVID-19では20〜41%にARDSを発症する
  • COVID-19以外のARDSでは腹臥位療法の有効性が示されている
  • 複数の研究者はNIV下(非挿管)で腹臥位療法を行うことで酸素化の改善や呼吸努力を低減する可能性がある述べている
  • これは自己誘発性肺傷害のリスクがある患者には有益な可能性がある
  • また気管挿管の回避やICU入室が減ることで資源が限られている状況として有益な可能性がある
  • しかし同時に気管挿管の遅延や嘔吐,血栓症のリスクを伴う可能性がある
  • 研究開始時には非気管挿管患者の腹臥位療法の安全性や実現可能性に関する報告はなかった
  • しかし研究中に酸素化が改善することが報告された

【方法】

  • イタリアのSan Gerardo病院(三次旧救急病院)

組み入れ基準

  • 18〜75歳のcovid19の確定診断を受けNIV(NPPV=CPAP),酸素療法を受けている入院患者
  • 口頭or書面で同意がとれている

除外基準

  • 妊婦、精神状態に変化があった患者
  • NYHA≦II以下、proBNPが正常値の2倍以上=つまり心不全患者
  • 在宅非侵襲的人工呼吸、HOT中のCOPD患者
  • 主治医が禁忌とした患者
  • 挿管が差し迫っていた患者
ポイント

組み入れ・除外基準は研究の安全性を保つことや研究対象を明確に位置付けることにおいて非常に重要な項目です。具体的かつ明確な基準が求められます。

プロトコルの流れ

組み入れ→ベースラインのデータ収集[SP 1]→腹臥位→10分後にデータ収集[PP1]→最低3時間腹臥位を実施→仰臥位→1時間後にデータ収集[SP 2]

(この間NIV,酸素の条件はできる限り変えない)

  • SP 1:腹臥位前のデータ
  • PP 1:腹臥位後10分経過した後のデータ(腹臥位中)
  • SP 2:腹臥位終了(3時間)後に仰臥位に戻して1時間後のデータ
  • 3時間経つ前に患者から中止の希望があれば中止
  • 1クール終了後は腹臥位か仰臥位とするかは自由に選択する
  • 腹臥位の快適性は4段階で患者の主観で評価

Primary Outcome(主要評価項目)

SP 1とSP 2のPF比(PaO2÷FIO2)

つまり腹臥位前と腹臥後の酸素化の変化

Secondary Outcome(副次評価項目)

  • 実現可能性:3時間腹臥位を継続できるか
  • 換気への影響:PaCO2
  • 血圧や呼吸困難の変化など

ポイント

臨床研究では通常、研究の趣旨(治療の場合患者の転帰または代替になる指標)に対する主要評価項目とその他の評価項目である副次評価項目を研究のアウトカムにしています。

【結果】

  • 対象患者:最終的に56人が対象者となった
  • 9名の患者が3時間の腹臥位に耐えられなかった(理由は下図参照)
  • 47名の患者が3時間の腹臥位に耐えられた
  • その内50%に当たる23名がその後に腹臥位療法を継続した
  • 1名のデータが欠損したため改善したかの判断がつかなかった
  • にしても20日間の入院数が667名という驚きの数です。。
  • 登録された患者のうち32%に当たる18例が最終的に気管挿管された
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Table1 :患者層

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–続き–

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  • 年齢は日本の患者層よりも若い印象
  • 喫煙者や糖尿病,COPD,肥満の患者は少ない(=重症化リスクのある患者層が少ない)
  • ほとんどがNPPVをつけての腹臥位だった

 (ヘルメット型で頭をすっぽり覆うような形状)

Table2:評価項目(抜粋しています)

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*腹臥位前後とはそれぞれSP 1とSP 2を意味します

腹臥位療法を実施した後に仰臥位に戻すと酸素化は改善しないという結果でした。 

しかし腹臥位後10分経過した状態(PP1)では酸素化の改善が示されました。

その表がこちらです。

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A:仰臥位→腹臥位→仰臥位→その後も腹臥位を行った群

B:仰臥位→腹臥位→仰臥位で終了した群

縦軸がP/F比=酸素化を示しているので腹臥位後10分経過した時点(PP1)ではどちらも酸素化が改善しているのが分かります。

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【私見】

まずはじめにこの時期のイタリアの感染状況が恐ろしいと思いました。

1つの病院で1日平均で33人以上のCOVID-19患者が入院しています。

この頃の1日あたりの感染者数をイタリアと日本で比較すると

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出典:JOHNS HOPKINS大学ホームページより

グラフ的にはあまり変わり無いように思いますが縦軸の”単位”に注目して下さい

1K=1000人なので

2K=2000人

500K=500000人(50万人)

全く別世界であることが分かります。

まずはこの中で臨床研究を実施しているのがすごいと思いますし

限られた医療資源の中で少しでも重症化を回避するような仮説を検証するために行動を具体化していることがすごい。

結果の解釈ですが

この記事で記載したこと以外にも多くの情報が論文には記載されています。

腹臥位を行っても仰臥位に戻すと一度改善した酸素化が再び低下するという結論でしたが

覚醒下でも腹臥位が耐えられる(Fesasibility=実現可能性)ことは証明されました。

しかしながら高齢者が多い日本では結果が異なるように感じます。

ただこの研究で重要だと感じたのが

呼吸困難の程度や呼吸補助筋の使用が有意差こそないものの低下している傾向があります。

(対象者が少ないのも影響していると思います)

これは気管挿管を行ったとしても行わなかったとしても

自発呼吸の呼吸努力が増大することにより起こる肺傷害(P-SILI)を予防する可能性があるのではないかと感じさせます。

ポイント

P-SILIとは重症呼吸不全において自発呼吸によって経肺圧(肺胞内圧)が上昇することで肺に傷害をきたすことです。

COCID-19では感染後最初の肺傷害を生じると肺血管透過性が亢進し肺水腫やガス交換能が低下するため呼吸困難が生じます。

そうすると呼吸努力が増大し二次的に肺傷害が起こる負のループに陥ります。

今後日本においても覚醒下の腹臥位療法が選択される場面も増えていくかもしれません。

そうした意味では重要な研究であったと感じます。

まとめ

以上論文を読んでいきました。

実際には本論とは別に付属の文章もあってボリュームがかなり大きいので

かなり割愛しながらお示ししました。

英語の論文であっても翻訳アプリとちょっとした読み方のコツを掴むことで

誰でも論文を読めると思います。

Nパパ

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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