以前の記事では腹臥位療法の目的・メリットについて解説しました!
今回は具体的な方法やデメリットについて解説したいと思います。
ちなみに腹臥位療法の方法については正解があるわけではありません。
なぜならば施設によって方法が異なるからです。
腹臥位療法を実施している施設でも
正直なところトライアンドエラーをしながら最善の方法を検討しているのが実情です。
なのでこの記事で紹介している方法が安全性や合理性を担保しているとは限りません。
その点については十分にご理解下さい。
では今日も一緒に学習していきましょう!
腹臥位療法の方法
【事前準備】
- 多くは筋弛緩を投与した上で実施する
- 鎮痛と鎮静を確実に行う
これが大事です。
呼吸不全で苦しいうえにその状況でうつ伏せになることを想像すると・・
なので必ず鎮静(深鎮静)・鎮痛を確実に行い
さらには筋弛緩を投与することが大事だと思います。
呼吸不全の患者さんに深鎮静をかけたり筋弛緩を使用することの理由は
吸気努力を低減して換気量を抑えることにあります。
これは以下を目的としています。
- 経肺圧(肺に実質的にかかる圧力)を低減する
- VILI(人工呼吸器関連肺傷害)を予防する
この2つのキーワードが分からなくても大丈夫です。
換気量が増えれば肺を傷つける=1回換気量を抑えると肺の保護に繋がる
と思って下さい。
さて方法の続きをお話しします。
【手順】
STEP 1 人員配置とブリーフィング
まずはじめに人員を確保します。
看護師だけで行うことはなく医師も含めた多職種で実施すべきだと思います。
可能だったら医師・看護師・セラピスさんが良いわね♪
概ねこのような配置で実施します。
頭側は医師が担います。
役割としてはメンバーのリードと気管チューブの把持です。
そして両サイドには看護師や医師が患者を体位変換したり持ち上げたりする係とクッションを挿入する係に分かれます。
どうしても患者さんを持ち上げなければいけないタイミングがあるのでお大人数が必要になります。
【ブリーフィングの内容】
- 手順の確認
- 不安や疑問点の確認
これが重要です。
体位変換に関わる全ての人が共通理解していないと必ず問題が起こります。
なので最も重要なのは事前のブリーフィングだと思っています。
STEP 2 体位変換
体位変換を行うにあたっては
背側だけドローシーツを敷いて行う方法もあれば
背側・腹側(お包み)にシーツを敷いて包むようにする方法などがあります。
個人的には包んでしまうのが楽だと思います。
患者さんは筋弛緩をかけていることがほとんどなので
包んでしまった方が安定しますし介助者が楽です。
【その後の手順】
- ベッドの端に移動する
- 側臥位にする(このタイミングで心電図の電極を背中に変える)
- 側臥位から腹臥位にする
- 1名を除き全員で患者をフラットに持ち上げる
- 残りの1名がクッションを挿入する
概ねこの手順で実施します。
前回の記事でお伝えした論文の方法についてはyoutubeで見られます。
https://nurse-daddy.com/腹臥位療法の基本を教えます!/この方法ではクッションを使用していませんが
どうしても褥瘡ができてしまうので皮膚保護剤とともにクッションを使う方がよいと思います。
本当は実際の写真を載せたいのですが・・
大体はこのような位置にクッションを挿入します。
顔はジェル状のクッションや腹臥位専用のクッションを使用します。
特に重要なのが顔と前胸部にクッションを配置することで頸部周囲に空間を作ることで気管切開の場合にカニューレが圧迫されることを防止できます。
STEP 3 その他のポイント
ちょっとしたポイントですが
軽く頭側を上げるような形でベッド全体の傾斜をつけることです。
顔面の浮腫を少しでも軽減することが目的です。
さらには眼球損傷予防でアイパッチを貼ることも重要だと思います。
眼球損傷は程度によって失明の可能性があるのでとても重要です。
腹臥位療法の継続時間としては16時間を目安にしています。
多くの論文では12〜16時間実施していることが多いです。
腹臥位後の注意点
ポイントは
- 呼吸性アシドーシス
- 循環動態の変調
- 気管チューブの閉塞
虚脱した肺を上にすることで1回換気量が減ることがあります。
当然換気量が減れば二酸化炭素分圧が上昇します。
そうすると血液は酸性に傾くアシデミア(呼吸性アシドーシス)になるわね♪
肺保護戦略でもそうですが
高二酸化炭素血症を許容する(Permissive Hypercapnea)という考え方があります。
肺を保護(1回換気量を減らす)する代わりに、CO2が上昇するのは許容しようという考え方です。
つまりリスク(CO2上昇)よりもベネフィット(肺保護)の方が上回っているので良し!ということです。
なのでどこまで許容するかは医師と事前に共有しておくと良いでしょう。
また実際に腹臥位をするとわかるのですが気管吸引をするのがどうしても難しくなります。
なので体位変換後に気管チューブの逸脱や折れ曲りがないかを確認することもそうですが
気管吸引できるかも確認しておくことをお勧めします。
ECMOを使用していない限り
気管チューブの閉塞は窒息になっているのと同様です。
腹臥位療法のリスク
前回の論文に記載されている合併症を示します。
実際には見たことはありませんけど事故抜管は恐ろしいね・・
これを見て感じて欲しいのは
急変するリスクがあるということです。
実施するのは簡単ですが
想定されるリスクは最小限に抑えなければ倫理的に問題がある治療となります。
なので勇気を持って中止するということも大事なポイントです。
中止の判断や基準は事前に医師と共有しておくのが重要です。
ということで今回は具体的な手順やリスクの側面についても説明しました。
まとめ
- 腹臥位の手順で重要なのはブリーフィングである
- 腹臥位に変換後は気管吸引が可能か確認する
- 腹臥位療法は一定数合併症が発生する
- 中間の基準や判断は多職種で共有する
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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