皆様こんにちこんばんは!現役ICU・認定看護師のNパパです!
PDって膵臓の手術ってことは分かるんだけど術式が複雑で良くわからない・・。
膵臓の手術はとても複雑で範囲も広いので侵襲が大きいんだ!膵液瘻や仮性動脈瘤、胆汁漏など合併症を早期発見するためにもドレーンの観察が重要なんだよね。。
新人や看護学生がICUでまず初めに経験するのが周術期看護です。
しかしICUとしては短期間しか在室しないので、実はサラッとしか勉強しないという人もいるのでは無いでしょうか^^;
今回は膵頭部の腫瘍に対して行われる「膵頭十二指腸切除術:PD」について一緒に勉強していきましょう!
- 術式のポイントについて
- 術後の観察や看護のポイントについて
- 術後合併症について
膵臓手術の概要
膵臓手術は腹部臓器の術式の中でも難易度が高い手術の1つです。
さらには血管も豊富であり、多くの吻合を必要とするため「術後合併症」が多い手術でもあります。
その多くは腫瘍によって手術を必要とします。
膵癌の基本知識
日本消化器学会によると、膵癌は2017年の癌による年間死亡数では4番目に高いと記載されています。
膵癌は特異的なバイオマーカー(採血などで検査できる項目)が、確立しておらず「早期診断」が難しいとされています。
国立がん研究センターによると膵癌の5年相対生存率は男性で7.9%,女性7.5%と公表しています。
膵臓はランゲルハンス島の細胞からインスリンやグルカゴンなどの血糖調節に関わるホルモンを分泌(内分泌機能)するため、糖尿病のスクリーニングで膵癌を疑われて診断に至るケースもあります。
膵臓の手術難易度が高い2つの理由(膵臓の解剖生理)
膵臓の手術が難しい主な理由は以下になります!
- 複数の臓器と接している=多くの吻合部を必要とする(縫合不全のリスク)
- 複数の大血管と接している=血管の処理(出血性合併症のリスク)
膵臓は胃や肝臓、十二指腸など複数の臓器に囲まれた場所に位置します。
また膵臓は十二指腸や脾臓と接しています。
そのため、手術によって膵臓を取り除くことは接している臓器との道のりをつなげ直す「再建」が必要になります。
また門脈や上腸間膜動脈などの大きな血管とも接しています。
なので合併症のリスクが非常に高くなります。
難しいってことは時間も長くかかりそうね><
確かにPDは時間がかかるね・・。ってことはそれだけ手術侵襲が高くなるってことだね。。
膵臓のはたらき
膵臓は外分泌腺と内分泌腺の2つの機能があります。
- 以下の消化酵素を含む膵液の分泌
- アミラーゼ(糖質の分解)
- リパーゼ(脂質の分解)
- トリプシン・キモトリプシン(タンパク質の分解)→膵液漏の際に周囲の臓器を分解
- 重炭酸ナトリウムを含むアルカリ性(胃酸の中和)
- α細胞からグルカゴンを分泌
- グルカゴンはグリコーゲン(貯金してる糖)を分解し血中に糖を供給
- β細胞からインスリンを分泌
- インスリンは細胞内に糖を取り込む(GI療法の過去記事参照)
- δ(デルタ)細胞からソマトスタチンを分泌
- ソマトスタチンはグルカゴンとインスリンの分泌抑制を行いバランスを調整
膵臓ってマイナーな臓器だけどめっちゃ大事そうな臓器ね・・・><
膵頭十二指腸切除術(PD)の術式
ここからは具体的な術式と観察のポイントを解説します!
PDといっても色々術式があるの?!
そうそう!膵臓を中心に胃や十二指腸などどこまで周囲の臓器を温存して切除するかで術式が変わって来るんだよね。。
PDって切除範囲がすごいわね・・!手術侵襲が高いのも納得。
患者のQOLや栄養状態のことも考慮して、臓器の温存がPDの中で重要視されているんだね♪
PDの術後に留置されるドレーンは?
術後のドレーン は消化管を再建した箇所の周辺や液体が貯留する場所に留置されます!
- 膵管チューブ:膵管のドレナージ(減圧)→膵液は無色透明なのでこれ以外になったら報告
- 膵−空腸吻合部周辺(膵−胃と表現されることもある)→ワインレッド色に注意
- 胆管−空腸吻合部:縫合不全の観察→胆汁様になったら縫合不全の可能性
- 胆管ドレーン:胆汁のドレナージ→胆管内の減圧
これ以外にも経腸栄養のための腸瘻も留置されることがあります。
また胃内の減圧やGDE(胃内排泄遅延)時のドレナージを目的に経鼻胃管も留置します。
術後合併症はどんなことが起こる?
注意すべきPD特有の術後合併症は大きく3つあります。
- 膵液漏
- 腹腔内出血
- 胆汁漏
この3つの合併症はドレーンの観察で早期発見ができるのでポイントを学びましょう!
術後の観察ポイントとドレーン 管理
3つの合併症は観察が重要です!ドレーンの色調変化に注意していきましょう!
ドレーンの役割は2つです。
- インフォメーション(情報)ドレーン:腹腔内などの状況をモニタリングする
- ドレナージ(排液)目的のドレーン :血液や腹水などの排液を目的とする
基本的に腹腔内に留置されたドレーンからは術直後は血性〜淡血性ですが、日を追うごとに薄くなっていきます。
また最近ドレーンについてはCDCのガイドラインでも感染管理の観点から以下のことを言われています。
- 不要なドレーンは留置しない
- 留置する場合は閉鎖式ドレーンを留置する
- 必要がなくなったドレーンは早期に抜去する
腹腔内に留置されてるから腹腔内感染のリスクがあるわね・・><
合併症その1 腹腔内出血
PD術後の腹腔内出血はおよそ2〜8%で生じると言われています!
膵液瘻を合併した場合は腹腔内出血のリスクが上がるって先生が言ってた・・。
実はNパパの看護師人生初めての急変はPD術後の仮性動脈瘤破裂による出血性ショックでした・・。
術後24時間以内の早期に生じた腹腔内出血については、手術操作時の止血が不十分の可能性があります。
一方でそれ以降に生じる出血は以下のような要因が考えられます。
- 消化管の吻合部からの出血
- 仮性動脈瘤からの出血
PD術後の仮性動脈瘤は数多く報告されており、その多くが縫合不全や膵液瘻によるものと言われています。
腹腔内出血があった場合の死亡率はなかった場合と比較し5倍以上とも言われているので注意が必要です。
腹腔内出血時のドレーン チェックポイント
腹腔内に出血が見られている状況ではドレーンの性状はもちろん血性になります。
特に晩期の場合はそれまでのドレーンの性状が突然血性に変化した場合は、医師への報告が必要です。
特にドレーンバッグまでのチューブ内の性状にも注意だね♪
【ドレーンの閉塞とミルキング】
どのドレーンも同じですが、ドレーンはドレナージ(排出)や性状を観察するために留置されています。なので、閉塞して排液が得られない場合は役割を果たすことができません。
排液が血性である場合は、凝血によって閉塞する可能性もあります。また膿瘍がドレナージされている場合など、液体の濃度が高い(ドロドロ)の場合も注意が必要です。
医師の考えにもよりますが、基本的にはドレーンチューブをミルキングをして排液を誘導することがとても大事です。
その他にも出血による心拍数上昇や循環のフィジカルなども重要なポイントだね!
詳しい内容を知りたい方は以下のリンクを参照してください!
次は膵液瘻について解説していきます!
- 膵液漏
- 腹腔内出血
- 胆汁漏
合併症その2 膵液瘻
PD術後で最も注意すべき膵液瘻について解説します!
膵液瘻はなんで重要なの?!
- 自己融解による血管破綻を生じ腹腔内出血を起こすリスクがあるから
- 腹腔内膿瘍を生じ敗血症につながるリスクがあるから
ってことは膵管チューブが自己抜去されたら・・・・・。
そうそう・・・。だから不快感がないよう疼痛コントロールが重要なんだ♪
膵液にはタンパク質を分解する酵素を含みます。
生体はタンパク質で構成されているため、自己の臓器や血管を消化することで上記のような合併症につながります。
膵液は基本的には無色透明です。
そのため膵管チューブから排液される膵液の性状が変化した場合は医師へ報告することが重要です。
特に血液と反応することでワインレッド色になるのはとても有名です。
そういえば術翌日の検査にドレーンの検体が含まれていたけど、膵液瘻と関係あるの?!
そうそう!ドレーンに含まれるアミラーゼを検査して膵液瘻が起きているかチェックしているんだよ♪
膵液には糖質を分解するためのアミラーゼが含まれています。
これを利用して膵臓と吻合している箇所など膵液が存在しない場所に留置されているドレーンの検体に含まれているアミラーゼを検査して膵液瘻の有無を評価します。
- ドレーンの性状がワインレッド色になる
- ドレーンの排液に含まれるアミラーゼが5,000U/L以上
合併症その3 胆汁漏
胆汁漏ってことは胆汁が漏れることね!!
その通り!!笑 胆汁は黄色っぽくてトローっと粘稠度が高い特徴があるよ!
胆汁漏はドレーンからの胆汁漏出が術後4日目以降も続くこととされています。
腹膜炎のリスクはありますが、胆汁漏そのものが重大な合併症を引き起こすことはありません。
ただし胆汁は刺激性が強いため皮膚に接触した場合は皮膚障害を引き起こす可能性があるためスキンケアが重要です。
まとめ
- 術後の合併症は腹腔内出血,膵液瘻,胆汁漏
- 膵液瘻は膿瘍形成や腹腔内出血を引き起こす重大な合併症
- 膵液瘻はドレーンがワインレッド色になることやアミラーゼが5000U/L以上がポイント
以上参考になれば嬉しいです!こうした記事を読んだ後は書籍で勉強することをお勧めしています^^