ICUの知識

【治療】高カリウム血症とGI療法〜看護師も電解質異常に注意しよう〜

皆様こんにちこんばんは!現役ICU・認定看護師のNパパです!

Nパパ

この記事では以下のことを説明してます!

  • 高K血症で注意するポイント
  • 人間のK調節の仕方
  • GI療法を行う理由
  • GI療法の注意点

こんな臨床場面って見たことありませんか?

朝の採血結果でカリウム値がなんと6.2mEq!!すると担当医が走ってきて

担当医

ちょっとKが高かったから採血もう1回と12誘導心電図とってGIの準備しといて!!

ピコ様


1人でアタフタしてたら先輩にGI療法についてもう1回まとめてくるように言われたわ・・・

こんな経験をした方も実は多いのではないでしょうか?

高K血症の治療の代表である「GI(グルコース・インスリン)療法」ですが

グルコースとインスリンを投与することでなぜ血清K値が低下するのかあまりよく分からないという方も多いと思います。

ピコ様


今さら誰かに聞けないわ・・。ましてや先輩には・・。

という方のためにも今回は「高K血症とGI療法」について一緒に勉強していきましょう!

 高K血症はどのような患者さんに多い?

皆さまは高K血症の患者さんに遭遇したことがありますか?

【高カリウム血症】

高カリウム血症は血清カリウム値>5.5mEq/Lと定義されます。

アメリカの医療保険データベースを元にした観察研究では2010〜2014年の期間で観察した2,270,635例の患者さんを解析すると2014年の高Kの有病率(その時点で疾患を持つ割合)が1.57%であったとしています。

▷参考文献:Curr Heart Fail Rep. 2019 Jun;16(3):67-74.

さらに心不全やCKD(慢性腎臓病)の方だけを見ると6.35%だったそうです。

心臓と腎臓の働きは密接に関係しています。

例えば、急性心不全になったとします(急性非代償性心不全;ADHF)。

すると心臓のOutputが低下することで腎臓の血流が低下します。

さらにRAAS(レニン・アンギオテンシン・アルドステロンシステムが活性化し、結果として心臓や腎臓に負担がかかるようになります。

また、皆さまがご存知のとおり腎臓はKの排泄に深く関わっています。

そのため、心不全や腎臓が障害されると高K血症になるリスクが高まります。

Nパパ

最近では「心腎関連」とも言われてます!

心臓が悪い人は腎臓が悪くなる要素がありますし腎臓が悪い人は心臓が悪くなる要素があります。

なので「腎臓内科や循環器内科の病棟」の方は、臨床で高カリウム血症に遭遇する確率が高いと言えるかもしれません。

もちろんICUなどの重症患者さんがいる部署は高確率と言えるでしょう。

高K血症の症状

Nパパ

血清カリウム値の基準値は【3.5-5mEq/L】だよ♪

mEq/L=メックパーリットル

高K血症の緊急性が高い理由はそのまま放置すると「心停止」してしまうからです。

ピコ様


そんなこと言わないで・・・ピエン

カリウムをはじめとする電解質異常は人間の生体機能を維持する上で非常に重要な要素です。

またカリウムの基準値を見るとかなり狭い範囲で厳密に調整されていることが分かります。

それほど重要なんですね♪

高K=テント状T波?!

高K血症と言えば「テント状T波」ですね。

高K血症ではV2-V4でT波の増高(尖った)が見られます。

ピコ様


じゃあK値が高くてもテント状T波が見えなければ安心ね・・フフ♪

Nパパ

そういうことすぐ言うから先輩に怒られんだよ^^;

それはとても危険な発想です!!!!

ある総説には前向き研究で血清K>6.0mEq/Lの患者のうち46%にしか心電図変化が見られなかったとする論文も引用されていました。

▷参考文献:J Am Soc Nephrol. 2017 Nov; 28(11): 3155–3165.

つまり高K血症の中にはテント状T波が見られないケースもあることを理解した方が良いということですね♪

高Kは房室結節・his・プルキンエ繊維の伝導遅延を引き起こします。

そのため高K血症は

  • 心臓の過興奮性(心室頻拍,心室細動)
  • 心臓の抑圧性(徐脈,房室ブロック)

これを引き起こす可能性があります(こわー)

なので、特に血清K濃度が6.0mEq/Lを超える場合は緊急でKを下げる治療をする必要があります。

高K血症の原因は3つで考える

人間の体の中ではカリウムの調整が以下の3つで行われています。

  1. 摂取
  2. 細胞内外の移動
  3. 腎臓

重要点としては細胞内への移動は調整のスピードが早い・腎臓での調整はゆっくりということです。

これを踏まえた上で高K血症の原因を示すと・・・

  1. 過剰摂取:Kが豊富に含まれる食品や薬剤の摂取
  2. 排泄障害:腎臓におけるKの排泄が減少
  3. 細胞外へのシフト:細胞内のKが様々な要因により細胞外(血漿など)に移動

大きくこの3つになります。

つまり「調整機構のどこかが上手くいかない」というのが主な原因ということです。

特に集中治療領域ではAKI(急性腎障害)を併発し、排泄障害から血清K値が上昇するなんてことはよく見受けられます。

ショックで犠牲になる臓器たち

ショックの状態になると生体は重要な臓器である心臓や脳を守るために臓器への血液還流を低下させます。

例えば「消化管」「皮膚」「腎臓・肝臓」などが挙げられます。急変したときの採血データを見ると肝・腎機能を示す値が上昇していると思います。これはいわゆる「ショック腎」「ショック肝」というものです。

高カリウム血症の詐称事件?!

高カリウム血症の原因は3つとお伝えしました。

Nパパ

実はあたかも高カリウム血症に見えてしまうことがあるんです。つまり”偽物”ですね・・。

ピコ様


匂うわ!!詐欺のニオイが!!

原因は血液疾患など様々ありますが「看護師が関わるケース」を2つご紹介します。

【Case 01】この患者さんの血管細かったけど採れた!!

血管細い人の採血って本当に大変ですよね?

新人ナース

やった!Aさんの血管細くて苦労したけど頑張ってシリンジ引いたら採れた〜♡ご褒美に明けでなんか買おっ♪

たまに採血時に血液の逆流が少ない時に、ぎゅーぎゅーシリンジを引っ張るのを見かけません??

これが偽性高カリウム血症の原因の1つです。

主な原因は採血の際に過剰にシリンジ内を陰圧にすることで血球が破壊されることです。溶血とも言います。

細胞の中はK濃度が高いため、血球が破壊されることで検体の中にある血液中の細胞内のKが流出して、検査値だけが異常になります。

ECMOの記事でも書こうと思いますが、実は血球は陽圧には強くても陰圧には弱い性質を持っています。

注意しましょう♪

【Case 02】検体送り忘れてた!!アワワ・・・

新人ナース

採血採れたし・・っと。あっ!!カテに呼ばれたから搬送しなきゃーー!検体はあとで送ることにして、とりあえず冷蔵庫に入れておこう♪

Nパパ

これもブーーです!!

検体を長時間放置したり冷所に保管することによってもK値が上昇するので、検体の取り扱いにも十分注意しましょう♪

高カリウム血症の治療

高カリウム血症の治療は原因に挙げた3の要素を解決することが重要です。

本記事のテーマでもある「GI療法」は細胞内への移動を促進するための治療です。

これについて解説していきます!

GI(グルコース・インスリン)療法

体の中にはKが存在していますが、そのほとんどが細胞内(約98%)に存在しているため細胞外のKは1〜2%と言われています。

細胞外というのは血管内ということで理解してください。

(正確には細胞外というのは体液分画としては血漿5%と間質15%にわかれます。)

つまり採血で見ているK値は体内に存在する僅かなKを見ていることになります。

そして血中のK値が上昇しないように、生体はNaポンプなどの様々な機構を利用して厳重にKを管理しています。

GI療法でなぜKが下がるかという問いへの回答になりますが

GI療法はインスリンにKが細胞内へ移動する作用があるため高カリウム血症で行われます。

インスリンによる細胞内へのK取り込みは2段階で行われる

インスリンを投与したときのKの移動は2段階で行われます。

まずインスリンが投与されると「Na-H交換輸送体」というものが活性化します。

これはナトリウムを細胞内に取り込んで水素イオン(H)を細胞外に出すというものです。

次に細胞内に入ったNaを細胞外に汲み出すために「Na-K ATase(エーティーフェーズ)」が活性化します。

これによって細胞外(血管内)にのKを細胞内に取り込むことができます。

そうすることで血中のK濃度が下がるということになります。

GI療法後の注意点〜Kは再びやってくる〜

これまでの説明でGI療法はインスリンの作用を利用して「細胞内にKを移動させる」治療であると分かりましたね♪

Nパパ

ただし注意点もあります!!

GI療法の注意点としては利尿剤などと異なり、細胞内にKを引っ込ませるだけで体内のKの総量は変わりません。

つまり高K血症を引き起こす病態が改善しなければ根本は解決しません。(時間が経てば再び血中のKが上昇する可能性がある)

例えばアシドーシスが原因で血中のKが上昇しているのであれば、アシドーシスの原因となる病態を治療しなければ高Kは改善しません。

あるいは腎臓の障害が主要な原因であれば、血液透析を導入しなければ解決しません。

なので、GI療法は高K血症による致死的な合併症を防ぐための一時凌ぎだということを看護師も忘れてはいけません。

あとは基本的なことですが低血糖にも注意ですね♪

インスリと共にブドウ糖を投与しているので大丈夫だとは思いますが念のため低血糖にも注意する必要があります。

なのでGI療法を実施した場合は、その後の血糖フォローは必要です。

先生が指示だしを忘れていたら、1時間後くらいにそっと血糖を報告してあげてください。

デキナースと思われますw

まとめ

ということで、今回は高K血症とGI療法についてお話しました。

GI療法についてご理解いただけたでしょうか?

  • 高カリウム血症は心停止などの致死的な合併症がある
  • GI療法は細胞内にKを取り組むことで血中のK濃度が低下する
  • 偽性高カリウム血症は看護師の採血手技にも関わる
  • GI療法は低血糖やその後のリバウンドに注意する
Nパパ

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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  1. […] 電解質以上(高K血症)→高カリウム血症とGI療法の看護についてはコチラ […]

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